新しい避難システムの実証実験に、スマート自治会のシステムが使用されます。
中国新聞デジタル引用

広島市の防災士や自主防災会役員が、災害時に自力で逃げるのが難しい高齢者たちを避難場所まで連れていく「避難バス」の運行を研究する会を発足させた。11月にも安佐南区の団地で実証実験をし、情報通信技術(ICT)を使って避難状況を確認する。昨年7月の西日本豪雨で多くの避難困難者が亡くなったのを教訓に、地域ぐるみで犠牲者を減らす仕組みづくりを探る。

位置、スマホで即把握

 日本防災士会広島県支部のメンバーたちでつくる「避難システム構築研究会」は今月7日、安佐南区で初会合を開いた。「バスの大きさは」「車に乗るのに介助が必要な人はどうするか」。約20人が実験で確かめる課題について意見を交わした。ワーキンググループ座長の会社員山内雅志さん(37)は「避難したくてもできない人の選択肢を増やしたい」と力を込める。

 実証実験は安東地区の斜面に広がる弘億団地(約1300戸)で実施する。メールで避難情報を発信し、土砂災害警戒区域に囲まれた団地北部に住む高齢者たちを、団地外の安全な避難場所に移動させる。いったん安全な場所に集まり一斉に運ぶ「集団避難」、希望者を自宅まで迎えに行く「個別避難」の両パターンの検証を目指す。

 スマートフォンなどを使って避難者と支援者、バスの位置をリアルタイムで把握。逃げていない人に連絡する試みもする。バスの調達方法など今後の課題も多い。安東学区自主防災会連合会の柳原隆司会長(78)は「団地は高齢化が進み、人力で連れ出すのは難しくなっている。負担の少ない体制をつくりたい」と話す。

 研究会は、広島県と広島市がITを使った新ビジネスなどを共同で支援する「ひろしまIT融合フォーラム」から67万円の助成を受けた。実験結果などを踏まえ、来年3月までに研究成果をまとめる。

 避難バスの運行は、富山県砺波市や埼玉県川島町が既に始めている。アドバイザーを務める広島経済大の松井一洋教授(災害情報論)は「行政ではなく地域の防災士や住民による研究に意味がある。現実的な避難手段を示し、地域防災のモデルとなってほしい」と期待している。

 西日本豪雨では、広範囲に冠水した倉敷市真備町地区で犠牲者51人のうち42人が要支援者だった。避難率の低さが指摘され、避難所までの距離が遠い場合の確実な避難方法を求める声が高まっている。(久保田剛)